マジメさんのライフ・ラボ

マジメに気楽に考えたことをつらつらと

芥川賞受賞作『火花』感想 前編

 

f:id:shimagyu-majimesm:20170506222228j:plain

珍しく、書評です。

 

史上初めて、お笑い芸人が芥川賞を受賞したと連日報道の嵐だった『火花』。

私はあまり新しい作品を読みたがらない人間で、『火花』もそうして「何となく読まない」作品に入っていました。

世の中であそこまで露骨にもてはやされていると、天邪鬼の私としては逆に「読んでたまるか」という考え方になってしまうんですよね。

百田直樹の『永遠の0』などもそうした感情から避けてしまっていました。今となっては百田さんは何だか炎上キャラ化している感も否めませんが笑、ブームもひとしきり去ったので読んでみようかなと思ってます。

 

そんなこんなで、『火花』もハードカバーをわざわざ買って読もうという気にもなれず、文庫本もあえて買って読むほどの思い入れもなかったのですが、NHKでもともとネット限定で放映されていた『火花』のドラマ版が放映されていることを聞き、興味本位で見始めたのがきっかけです。

舞台になっている吉祥寺や高円寺も個人的にはゆかりのある街だったので、そうした親近感もあって興味を惹かれました。

 

 

ドラマを見終えようかというときに、タイミングよく文庫本を借りることになり、あっという間に読んでしまいました。ドラマで先に映像から入った分、ドラマの脚本のような感覚で映像を呼び起こしながら読み進めていたように思います。

 

※ 以下色々とネタバレしています ※

 

 

 

  

まずシンプルな感想としては、ドラマの配役は見事だなーと思いました。

若かりし頃の又吉青年をそのまま映像化にしたような徳永役の林遣都さんや、原作でも「痩身だが眼光が鋭く、迂闊に踏み込ませない風格」と書かれていた神谷役の浪岡一喜さんは、バッチリ過ぎましたね!

私がドラマから入って後で原作を読んだから余計かも知れませんが、映像と文章の間のギャップが良い意味でほとんどありませんでした。

文学作品の映像化はいつも賛否が分かれる所ですが、この『火花』に関しては成功だと思います。

 

そして肝心の内容。

なんだかんだ言って、最近の小説(「文学作品」とは呼び難いものもたくさんあるのであえて「小説」と呼びます)をこうして鑑賞するのは初めてかも・・・というぐらいに読んでいなかったのですが、素直に感動しましたし、作品が訴えようとしているメッセージ性も私なりに感じられたように思います。

 

かつて世話になった先生が、

 

たとえばここにリンゴがあるとしよう。

「これはリンゴだ」と書くのが直木賞の作品。

「これはリンゴかな?」と書くのが芥川賞の作品なんだ。

 

などと話していたのを思い出しました。

その話によれば、この『火花』も「これはリンゴかな?」と書く作品ですよね。

今回『火花』を読んでみて、奇しくも先生のこの言葉をふと思い出したのでした。

 

舞台は少し前(といっても10年ほど)の東京。完全に現代です。

そして登場人物も、売れっ子芸人を目指す若手芸人とその先輩の2人がメインです。

よく古典文学と聞くと連想されるような「肺結核を患った薄幸の青年」でもなければ、戦中派作家がよく描くような「戦争に行くという運命を背負った前途ある若者」でもありません。

何か「文学っぽいお話になりそう」というフラグが立っているそうした登場人物とは違った、そこら辺にいそうな人たちばかりで紡ぎ出されるお話。

 

最初見始めたときは、「この設定からどうやって人間の深いところを抉り出すんだろう」とあまり想像がつきませんでした。

ドラマは、民放キー局が視聴率争いに精を出しているドラマのような視聴者を煽る演出は一切なく、淡々と、何を強調するというわけでもなく、静かに進んでいきました。

最後の3話ぐらいで一気に核心となるテーマに接近していったような感じがします。

 

つらつらとここから語りたいのですが、長くなりそうなのでいったん切ります。

また続きは書きますね。